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CALL the ARK

- 別の時空(次元),
アグラスフィアと呼ばれる世界(惑星)。
:Aglassphere(Aglaia's Sacred Sphere).

アグラスフィアはAglaiaの祝福によりバランスを保たれた世界だった。
しかしある日、アグラスフィアは突如としてそのバランスを失い、世界はバラバラに分断された。

この世界の誰もが何故こんな事が起こったのか知る由も無かったが、分断された各地域の王達はアグラスフィアを再結合すべく行動を起こす事を決めた。

アグラスフィアの再結合を実現すべく、先ずは分断された地域同士の接続を試す事にする。

- アークシステム
唯一、地域と地域を接続可能な方法と言われている。
各地域に遺跡として存在するこのシステムは、古代科学書によると古代世界に於いて交通手段として使われていたらしい。
ある地点からある地点へ人や物を瞬時に転移する、俗に言うテレポートの様なシステムであり、Aglaiaの祝福を動力として稼働していたようだ。

このシステムがまだ使用可能かどうか定かでは無いが、このシステムが今起こっている混沌を唯一解決出来る可能性を秘めていた。

- 言い伝え
この世界には5節からなる1つの古い言い伝えがある。
< Call the Ark >
1.想像も出来ない様な混沌が訪れる刻、私の神Aglaiaは彼女の船を呼び起こす
2.船は私をそこへ運ぶ。船は彼らをそこへ運ぶ
3.●▲▲▲■×◆◆×××●▲●▲■■■■■■
4.世界は産まれ、世界は再生する
5.再生が私の上を回る。再々生が私の上を回る

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光流湛えしアルマネスク - EP1.始まりの日 -

王国中央区防衛施設コロニー内アーリアナの南、農耕政策指定区ラギに位置する村トナン。

緑に囲まれたその村でリトはお気に入りの見晴らしの良い大樹の下で、

王国図書館から借りた古文書を読みふけっていた。

リリアとの約束も忘れて。。。


「リト!あんたまたリリちゃんとの約束ほったらかしにして本ばっかり読んで!!」


朗らかな日差しに包まれた午後の優しい雰囲気をつんざく母アスターシャの呼び声に

リトの表情は絵に描いたように曇っていく。


道具袋の中にある懐中時計を取り出し、急いで時間の確認をする。

約束の時間は正午。時計の針は残酷にも13時に丁度差し掛かる所だった。


- おかしい…本を読み始めてそんなに経ってないし、マピーには時間前に知らせる様

 ちゃんと言っておいたのに、、、!!?

(マピー:子供のキマイラ。使い魔兼ペットとしてリトが面倒を見ている。)


正午15分前にお知らせするという主からの大事な命令を果たす為

全力で懐中時計とにらめっこしていた結果、志半ばで力尽きた(?)のだろうか。

道具箱の前で安らかな寝息を立てる小さなキマイラには、最早、諦めの視線を送るのが

精一杯だった。


「リリちゃんいつもいつもごめんね。うちのリトが迷惑ばっかり掛けて。」


「いえいえ、大丈夫ですおばさま。いつもの事なので慣れてますから。」


母とリトの会話が近付いてくる。言い訳を考えている時間は僅かしかない。


- どうする?正直に謝るか?マピーが知らせてくれなかったからと言い逃れるか?

 いや、しかしリリアはマピーを溺愛している節があるから、下手にマピーのせいにすれば

 後で何されるか分かったものじゃない。。


「ほらリト!何やってんだい!早くこっちに戻っておいで!」


思考を巡らす為の時間が無いのは明らかだった。

全ての思考を諦め、罰が悪そうに二人の元に戻る。


「いやー、この古文書の解読に集中してて、つい時間が経つのを忘れてたというか

 何というか。。」


「言い訳はいいから早くリリちゃんに謝りなさい!あんたはいつまでたっても時間を守れないんだから!」


このやり取りを一体どれ程繰り返して来たのだろうか。リリアとは子供の頃から

いつも一緒で、何をする時でもいつもリリアが側に居た。

それは王国古代研究局直轄の考古学研究班に所属した今も変わらない。


そんな事をふと考えていたリトを笑顔で、但し無言で見詰めるリリアの目は

到底笑っている様には見えなかった。


- あー…怒ってますよねそーですよね。1時間待ちですもんね。。どうしよう。。


「そうそう!これから古代研究局の局員が来て何かの説明があるんだったよな!

 いやぁ、こんな事滅多にないし何があるんだろうな!」


「行くわよ。」


「はい。」


有無を言わさぬ迫力に付き従う様は、傍から見ればどこぞのお嬢様とその従者にしか

見えなかっただろう。

その二人の姿を見て含み笑いをする母に見送られつつ、二人は考古学研究施設カセラスへ

向かった。


運命の再現、その始まりへ。-


― 考古学研究施設カセラス内、第二講義堂 ―


カセラスに着くと、多くの研究員が既に集まっていた。各々、自分の研究や

最新情報の交換等しつつ古代研究局の局員の到着を待っていた。


リトとリリアは多くの研究員を横目に指定された第二講義堂へ向かった。


「こんなに研究員が集まってる所なんて初めて見たな。やっぱり例の大分裂についての

 事なのかな。」


「まず間違いなくそうでしょうね。普段は私達が局に出向くのに、局員直々に

 このカセラスに来るなんて今まで数える程しか無いもの。」


第二講義堂に着くと既に殆どの席は先に来た研究員で埋まっていた。

何とか窓際の空いている席を確保し、椅子に腰を下ろす。まだ局員は到着していない様だ。


「そう言えば、何かの古文書を読んでたのよね?何についての古文書なの?」


待ち時間を潰したかったのか、単純に気になったのか、どちらにも取れる表情だ。

まだ暫く説明は始まらなさそうだし、確かに暇つぶしには丁度良いだろう。


「この古文書は、アグラスフィアに伝わる言い伝えについての研究と調査結果を

 纏めた本でさ、前から気になってはいたんだけど、大分裂が起こった事で

 言い伝えとの関連性が各方面から指摘されてただろ?

 だから、個人的にも調べてみたくなってさ。」


「リトは昔から何でも自分で調べないと気が済まない性格だもんね。それで、

 何か分かった事でもあるの?」


「まだ手探りの状態だけど、幾つかの仮説を立てる事は出来たかな。

 あくまで言い伝えを肯定的に捉える事が前提だけどな。」


古文書にて分析された言い伝えの調査研究、そしてその調査から導き出した個人的仮説は

正直まだ大した量でも無いし、今の時間があれば説明するには十分だろう。


― 言い伝えに関しての古文書の分析 ―

1節について。

『想像も出来ない混沌が訪れる刻』とは、以前にも今回と似た様な、又は同様な事が

 起こっていた事を意味していると推察される。


『私の神Aglaiaは彼女の船を呼び起こす』については、アグラスフィア自体を指すのか

または、言葉通り神なるAglaiaの存在を意味するのかはっきりとしない。


『船』というキーワードについては多種多様な受け取り方が出来るので断言する事は

極めて難しいが、今回の件によってこの国は他の国と分断され浮遊大陸となっている

事から、この浮遊大陸の状態を所謂『船』としているんじゃないかと思う。


仮に『私の神Aglaia』がアグラスフィアそのものを意味する場合、アグラスフィアの中心となる浮遊大陸が存在するのかも知れない。


因みに、この浮遊大陸の状態はどの様な力が作用してどういう状態にあるのか、まだ解明されていない。



2節について。

『船は私をそこへ運ぶ。船は彼らをそこへ運ぶ』とは、1節に記されていた『船』と

同様の意味のものだと推察出来る。

その場合、『船』=浮遊大陸となる事から、この浮遊大陸がそこに住む者たちを

何処か特定の場所へ運ぶ為のものなんじゃなかろうか。


3節について。

この節については何らかの理由により削除されていて、

どの文献からも確認する事は出来なかった。


4節について。

『世界は産まれ、世界は再生する』とは、この『世界』という言葉の意味の取り様によって大きく見解が分かれるだろう。

アグラスフィアそのものなのか、又は別の何かを意味するのか。


仮にアグラスフィアそのものだとした場合『産まれ、再生する』とある事から今回の事象を当てはめると、何らかの解決策が存在すると考えられるのではないだろうか。


5節について。

『再生が私の上を回る。再々生が私の上を回る。』とは、4節に出てきた『再生』と

同様の意味とするならば『再生、再々生』と記されている事から、

この事象が何度も起こっている、又は起こると考えられる。『私の上』という表現は

比喩的なものだろうか?


『上』とは大まかに、天、空、宇宙等と表す事も出来るが『私』が何を意味するか

分からないので、あくまで推測でしか語れない。


― 以上の古文書の分析を踏まえたリトの仮説 ―

この古文書の分析を肯定的に考えた場合、大分裂は度々発生していて、その解決策も一緒に用意されてるんじゃないかと思う。

そして、その解決策に大きく関係するものが「船」であるとすると

この言い伝えは理解しやすい。


『船』=浮遊大陸であるならば、この大陸の何処かにこの事象を解決するヒントが

隠されているんじゃないだろうか。


それを見つける事が出来れば、大分裂が一体何なのか分かるかも知れない。


「リトはその古文書の分析を肯定的に捉えた上での仮説を立ててるって事だけど、

 肯定的に捉えようと思った理由ってなんなの?」


「確固とした理由がある訳じゃないんだけど、大分裂についての自分の見解と、

 この古文書の見解が近かったからかな。」


「ふーん。相変わらず一つの事が気になりだすと、そればっかりになるよね。

 まぁ、リトらしいと言えばらしいんだけどね。」


- これは飽きたか?飽きたのか?リアクションが明らかに退屈そうになって来てるよな

 これ。。


もっと劇場型な語り口調の方が良かったのか、それとももっとジョークを散りばめた方が

良かったのか、リトがまた新しい問題にぶつかった所に、外に出ていた研究員が

急いで講義堂へ入ってきた。


「おーい!局員を乗せた馬車が到着したみたいだぞ!」


その声を合図に研究員達は話を止め、それぞれの席に戻っていった。


「ようやく局員様の到着みたいね。」


「だな、さて、どんな話が聞けるのやら。」


上級職の装束を着た局員はカセラス事務職員に案内され、待ちくたびれた研究員達が待つ

講義堂へ赴く。


講義堂に入ると、研究員達は一斉に立ち上がる。


上級職が指示するまで起立するのがこの国でのルールだ。

誰しもが敬意を持ってやってる訳じゃないが、慣習として定着している。


講壇に上がった局員が研究員を一瞥し手で座るよう合図を出す。


局員は研究員が全員座った事を確認すると、研究員達が予想だにしていなかった話を

し始めた。


「国王の勅命により、カセラス所属の考古学研究員を加えた特務遂行部隊により

 アークシステムの起動を行う事となった。今件は危険を伴う任務となる。

 有志は名乗り出よ。」


短くも唐突な内容に講義堂内は、水を打ったかのように静まり返っていた。

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